インターネット講座2004 「宇宙から素粒子へ」

講義全体について

概要

宇宙は人類の知る限り極大の世界で、素粒子は世界の最も小さい構成要素を対象とする分野です。 この2つは、まったく大きさやエネルギーの尺度(スケール)の違う世界に見えます。 しかし物理学の研究では、これらは密接に関係し、むしろ別々に解明することはできない対象であることがわかっています。

講義はおおむね3つに分かれ、宇宙の構造と星の一生、氷の物性、素粒子の世界、と順にスケールを変えながら様々な事象についての観測や実験を 紹介し、それらの理論を解説しながら進みます。これを通じて、私たちの世界の 基本的な原理を理解することを目標とします。

履修対象/条件

力学等の物理学の基礎的知識として、大学1年次程度の物理の素養があれば十分理解できるように進めます。

レポート

レポートは年3回、各テーマの終わり(7,11,2月)に予定しています。

担当講師

大阪市立大学 大学院 理学研究科 数物系専攻

各回の講義

*各回の講義のページはタイトルをクリックして閲覧できます。

第1回 序論:宇宙から素粒子への階層構造 (4月)

宇宙物理学と素粒子物理学の研究が密接な関わりを持つことがわかったのは、宇宙の始まり-ビッグバン-についての 研究と、クォークやレプトンの基本的相互作用についての研究によるものです。 宇宙は初期状態ではとても小さく、非常に密度の高く熱い状態で、素粒子の濃密なスープのようなものでした。 また初期の状態では電磁気、強い力、弱い力、重力が1つのものであったと考えられています。 それが広がってゆくにつれて冷えてゆき、4つの力は別々のものになり、星や銀河が形成されて、現在に至ります。 この宇宙の進化のシナリオは、素粒子の性質の研究なしには説明できません。 講義の第1回ではその宇宙の進化のシナリオを追いつつ、素粒子や物性物理の研究とどのようにつながりがあるのかを 解説します。 また、宇宙や素粒子の大きさや重さについて、わかりやすく解説し、講義全体が対象とするものごとのおおよその スケールを知ってもらいます。

テーマ1:宇宙の構造と星の一生 (担当:神田展行)

現在の宇宙の様子を調べることは、宇宙の過去や未来を調べることでもあります。 このテーマでは、宇宙についての観測や宇宙論的な成果をとりあげます。

講義の最初では、宇宙初期に形成されたゆらぎの観測や、 宇宙の進化や構造に決定的な役割を担っていることが最新の観測で明らかにされつつある、ダークマターやダークエネルギ−について解説します。 次に、われわれにとってよく知られた天体である恒星を取り上げます。 恒星の最後は元素合成にも深くかかわり、また宇宙線(宇宙から降ってくる放射線)や重力波といったものの 発生源とも考えられています。これらの宇宙からの放射は、基礎物理学の発展には非常に重要な 役割を果たしました。今日も最前線の観測では、ニュートリノ、ガンマ線、荷電粒子、重力波などが、最先端の観測実験として試みられています。 これらの観測について、最新の実験と原理を紹介し、それによって得られる宇宙や天体の様子をとりあげます。

第2回 宇宙の構造 (5月)

第3回 星の一生 (6月)

第4回 宇宙からの放射 (7月)

テーマ2:氷の物性 (担当:丸山 稔)

物性物理学は、原子・分子が約1023個という膨大な数が集まり、人間のスケールに 凝集した物質を対象にします。私たちの身近にある、鉄・銅などの金属やその合金、 シリコン・ガリウム砒素などの半導体、ヘリウム・アルゴンなどの不活性ガス固体、 さらに複雑な分子からなる有機物質、生体物質に至るまで多種多様です。このような 超多粒子系では、個々の原子・分子の世界を支配している法則だけではとらえきれな い、異なるレベルの法則が存在します。以下3回にわたって、H2O分子が凝集した氷 を主な材料として、凝集系特有の物理現象を解説します。

第5回 水と氷 (9月)

第6回 氷の多様性 (10月)

第7回 雪の結晶 (11月)

テーマ3:素粒子の世界 (担当:有馬正樹)

世界を構成する基本的な素粒子はクォークであることがわかってから半世紀 近くが経ちます。20世紀始めに現代物理の根幹をなす相対論と量子論が確 立しました。それらを用いて原子構造の解明が進み、新たな素粒子が私達の 前に姿を現しました。究極の素粒子の世界へ迫ろうとしている研究の最前線 では、素粒子を支配している法則や階層構造のしくみについて、多くの成果 が得られています。このインターネット講座の最後では、現在の素粒子研究 に至る歴史を概観することから始めて、重力・電磁気力とは全く違う力によ り支配されている世界について解説します。物理の研究者が素粒子の世界と 取り組むにあたり心に描いているイメージを、できるだけ平易な言葉で伝え たいと思います。

第8回 電子・陽子の発見からミクロの世界へ (12月)

第9回 強い力が支配する世界:陽子・中性子そしてπ中間子 (1月)

第10回 クォークの世界 (仮題) (2月)