インターネット講座2004 「宇宙から素粒子へ」

第3回 星の一生
担当:
神田展行

はじめに

閲覧について

目次

  1. 恒星の誕生
  2. HR 図 と主系列星
  3. 質量によるシナリオ
    • 主系列星から巨星へ
    • 白色矮星
    • 超新星(I型)
    • 超新星(II型)と中性子星
    • ブラックホール

講義 第3回:星の一生

今回の講義では星(恒星)の一生、つまり形成から燃え尽きたり爆発したりするまでを紹介します。 星がどのような一生をおくるか、どのような終末になるかは、星の質量に依存しています。

恒星の誕生

まず恒星のもととなるのは星間ガスです。これは水素 H が3/4, ヘリウム He が1/4とほとんどを占め、残りの2%ぐらいがそれよりも重たい元素(酸素 O, 炭素 C, 鉄 Fe, 窒素 N, シリコン Si, マグネシウム Mg, ネオン Ne, 硫黄 S など)です。 ヘリウムは宇宙初期の高温状態で、陽子と中性子から合成されます。より重たい元素は、いまから述べる、星の進化の過程で核融合によって合成され、星の終末に放出されたものと考えられます。地球にあるおおくの重い元素は、かつて(より古い)恒星で合成された元素によってもたらされたものです。

まず星間ガスが重力であつまり、収縮を始めます。

集まったガスは高密度になって行きます。ガスのもつエネルギーが狭い範囲に押し込まれて行くので、 中心は高温になってゆきます。(ガス内部には温度の勾配ができます。)
高温になったガスは圧力も高くなり、膨張しようとします。この膨張をガス自身の質量による重力(自己重力)が押さえ込んでいる状態です。この、「星の内圧と押し込む重力のせめぎ合い」は、星の終末まで続き、進化のシナリオを決めます。 ガスが十分に集まっていれば、内部の温度が10万〜100万度(K)程度の温度になり、光をだすようになります。原初の星の形成です。
光を出すと表面は冷えて、ガス全体としては収縮することになります。 もしも、光を出すことによってガス体全体が冷えてしまった場合、恒星にはなれません。重力による圧縮が足りない場合はこうなります。 おおむね太陽質量の8%以下しかない場合は、冷えてしまい、褐色矮星(Brown Drawf)と呼ばれる天体になります。

質量が十分あれば、表面が冷えても圧縮の結果内部は温度上昇できることになります。

内部温度が1000万度(K)くらいになると、水素H原子核の核融合がおこります。 核融合を起こして輝きだしたことにより、これで1人前(?)の恒星の誕生ということになります。 星間ガスがあつまりはじめてからここまでで107年くらい経過しています。

HR (Heltzsprung = Russell) 図

恒星がどのように進化して行くかは次節で説明するように質量によります。一方で、現在観測できる星には、 さまざまな質量や明るさがあります。それについて一定の傾向を見いだすことができます。

HR ( Heltzsprung = Russell ) 図は、恒星について表面温度と絶対等級(=同じ距離からながめた星の等級、すなわち星の絶対的な明るさ)を示したものです。

この図で、1点が一つの恒星に相当します。表面温度は星の色に関係しています。温度の低い星は赤く、温度の高い星は青白く見えます。 (図は彩度を強調してあります。また色=波長と温度の関係は、第2回講義のディスカッションを参考。) 星々は、HR図の上で一様になったりはしません。

まず、中央に右下がりの帯状につらなる主系列星があります。星が形成されるときにあつまったガスの量によって、自己重力の強さもかわり、それによってどのくらい明るく輝けるかもきまります。明るい星が温度も高く、逆に暗くなるほど温度も低い、というのはわかりやすい性質です。主系列星の左上の星は明るく、燃え尽きるまで短い期間です。反対に右下の暗い星は、長い時間をかけて燃え続けます。 ”太く短く、細く長く”といったところでしょうか。星の重さと、おおよその寿命を表で示します。

星の質量 [太陽質量] 寿命 [年]
100 2.7 x 106
50 5.9 x 106
10 2.6 x 107
5 1.0 x 108
2 1.3 x 109
1 1.0 x 1010
0.7 4.9 x 1010
0.5 1.7 x 1011
(もしも我々の太陽が2倍重かったら? 人類の発生をまたずして終焉を迎えています!)

主系列星とはべつに、 HR図で右上に現われる温度の低いのに明るい星(赤色巨星 Red Giant)、左下に現われる温度が高いのに暗い星(白色矮星 White Dwarf)が目立ちます。こうした星はどのようにしてあらわれるのでしょうか?

質量によるシナリオ

星の進化の行く先は、やはり質量によって決まっています。

主系列星から巨星へ

主系列星の中心では水素 H 原子核の核融合が進みますが、いづれ中心では水素が燃え尽きてしまいます。ヘリウム He の中心核と水素の外層という状態になります。
Hを燃やし尽くした中心核は重力で収縮しますが、それによってまた温度が上昇します。H外層との境界付近も温度が上がり、HがHeに融合する核反応がおこります(水素燃焼殻)。
この燃焼殻を節として、内側の中心核は収縮し、外側は膨張してゆきます。そして星全体では半径が大きく外層の温度は低くなります。こうして赤色巨星( Red Giant)になります。
実は、古い銀河の星でHR図をつくると、上記のものよりもずっと巨星が多い分布になります。HR図は銀河系の年齢を表すバロメーターでもあるわけです。

白色矮星

星が十分重ければ、He中心核をさらに核融合させ続け、重い元素を燃やして行けますが、軽い星では巨星になったあと中心核は冷えてゆくしかありません。

太陽の8倍よりも軽い星では、中心核の核反応は軽い元素の段階でとまります。 この質量の星の場合、温度の割には密度が高く、中心核は炭素 C と酸素 O の段階で止まります。これ以上重力によってつぶれないのは、電子の縮退圧によって支えられるからです。 電子縮退圧という、熱よりも強い内圧で重力に抵抗している中心核は、温度の高い状態になります。(物質自体を散逸しているので、絶対等級は高くない)そして 中心核の光の輻射圧で、外層の物質はゆっくりと散逸し、ついには中心核がむき出しで残ります。こうして残ったものが、白色矮星( White Dwarf )です。

白色矮星は内部の熱エネルギーを光にして出していますが、既に核融合が止まっています。100億年程度で温度の低いくらい星になり、終末をむかえます。

超新星(I型)

星の質量が太陽質量の3〜8倍でも、水素外層を吹き飛ばせなかった場合はシナリオが変わってきます。中心核はNe, Mgまでも元素合成が すすみますが、あるとき核反応が暴走し、コア温度が急上昇して爆発します。これがI型の超新星です。

I型超新星(星は吹き飛んでしまいます!)

超新星(II型)と中性子星

星が太陽質量の8倍程度以上重い場合、Heのあとも核融合が続き、重元素の合成がなされます。中心から重元素がタマネギ状にできて行きます。
超新星(I型)になる場合よりも星が重い、つまり重力による収縮が支えきれなくなります。いわゆる重力崩壊がおころうとするのですが、 陽子が電子を吸収してすべて中性子となり、中性子の縮退圧で星を支えます。 外層部を吹き飛ばし、爆発を起こします。内側に向かっては爆縮がおこり、中心核は中性子星となります。 爆発のあとには、すべて中性子でできた巨大な原子核のような星=中性子星が残ります。 このシナリオが、II型の超新星爆発です。

II型超新星(中心に中性子星が残る)
爆縮がおこって陽子が電子を吸収する際に、ニュートリノを放出します。ニュートリノは非常に透過力の強い粒子なので、超新星内部から外部へ飛び出します。 1987年におこったマゼラン雲での超新星爆発ではこのニュートリノが
Kamiokande実験で直接捉えられました。これにより2003年度のノーベル賞を小柴氏が受けています。
また、この星の中心核の劇的な変化は、重力波を出すときたいされており、現在検出が試みられています。(詳しくは第4回講座にて。)

ブラックホール

星がもっと重たいとどうなるのでしょうか?
太陽の40倍以上重たい星(あるいは30倍ともいわれる)の場合、もはや中性子の縮退圧をもってしても、最終的に重力の収縮にあらがうことはできません。 重力崩壊がおこり、星はつぶれて、光さえも吸収する重力の底に落ちて行きます。これがブラックホール (black hole)です。

ブラックホール(さすがにマンガ絵はかけません....)

実際の観測で、ブラックホールは見つかっているのでしょうか? そのものは通常の意味で「見る」ことはできませんが、ブラックホールを伴星にもつ連星から物質が流れ込むときにX線が放出されます。 白鳥座のX-1 などのX線天体により、有力な証拠が得られています。


ブラックホールに降着するガスとX線

また、回転するブラックホールに摂動が加わると重力波が出てくることが高精度で予言されています。近い将来にはブラックホールからの 重力波が観測されるかもしれません。

ディスカッション

以下に今回も議論の材料をいくつかあげてみます。(やはり提出を要求するレポートではありませんが、興味があれば調べてみてください。)

ページの一番上に戻る
講義のホームページに戻る