インターネット講座2004 「宇宙から素粒子へ」

第4回 宇宙からの放射
担当:
神田展行

はじめに

閲覧について

目次

  1. 宇宙線
  2. 重力波
    • 一般相対星理論と重力波
    • 重力波を放射する天体
    • 極限にいどむ検出実験

    レポート(第一回目)について

講義 第4回 宇宙からの放射

地球には外部の宇宙からさまざまな”放射”がとどきます。太陽からの光(電磁波)はもっとも知られたものです。太陽からはそれ以外にも荷電粒子やニュートリノも放射されていますし、もっと別な天体からあるいは起源のよくわかっていない、いろいろな種類の電磁波、素粒子などが地球に降り注いでいます。

今回はそれらのうち、物理学の発展、宇宙論、天体物理あるいは素粒子に関係の深い、宇宙線と重力波を取り上げます。

宇宙線

宇宙線とは

我々の地球の外側、つまり宇宙から、いわゆる放射線:陽子あるいは原子核、電子、γ(ガンマ)線=光子、ニュートリノ等が到来します。これらを一次宇宙線とよびます。 一次宇宙線は地球に入射すると、大気と反応して、π(パイ)粒子、μ(ミュー)粒子、電子、γなどの 多くの粒子を生成します(シャワー)。これらを二次宇宙線とよびます。
私たちは常に宇宙線を浴びています。だいたい、1秒間に手のひらに1発くらいの宇宙線が 降ってきています。 地上に到達する大部分が、μや電子です。またニュートリノはほとんど途中で作用せずに、 地球を突き抜けていってしまいます。

これらの宇宙線がどこからくるのか、大きな謎です。 太陽風(p,αが多い)や、超新星からのニュートリノなどのように、 その起源がわかっているものもあります。しかし、大部分の起源は謎です。 最近になって、活動的な天体で加速されているというようなことが少しづつわかってきています。

宇宙線と物理学の発展

大型の粒子加速器がまだなく、十分なエネルギーの素粒子を実験室で出せない時代から、すでに 宇宙線は天然の高エネルギー素粒子源として研究の対象でした。宇宙線のなかにさまざまな発見がなされ、 素粒子物理の基礎を探るのに多いに貢献しました。湯川のパイ中間子の証明が有名です。 以下にその華々しい歴史を記します。
1900年以前 陽子p、電子e- の確認
1911-12 気球観測で宇宙線を発見 Hess
1928 反物質を予言 Dirac
〜1930 中性子or中性微子論争
ニュートリノを予言 Pauli
1932 中性子の発見 Chadwick
霧箱で陽電子e+を発見
→反物質の発見
Anderson
1934 中間子論 Yukawa
1937 μ粒子の発見 Anderson
1947 π中間子を宇宙線中に発見
→中間子論の証明
Powell
宇宙線中に"Vイベント"
→ Ks、Λ粒子:
strange (奇妙な)クォークを持つ粒子
Rochester, Butler
1948 π中間子をサイクロトロンで確認
1955-56 反陽子、反中性子を加速器実験で発見 Chanbenlain, Segre'
1953-56 原子炉実験で電子ニュートリの確認 Reiness, Cowan
1962 ミューニュートリノ発見(原子炉) Lederman
1960年代 加速器などで多数の素粒子の発見
1955 坂田モデル
1964 クォークの提唱 Gell-Mann, Zweig
1970年代 "標準モデル(Standard Model)"の確立 Winberg, Salam,
1974 cクォーク(加速器実験)
1975 τ(加速器実験)
1977 bクォーク(加速器実験)
1983 W+-, Z0 ウィークボソン
1987 超新星からのニュートリノ観測 カミオカンデ実験
1998 ニュートリノ振動 スーパーカミオカンデ実験
赤字が宇宙線観測/実験によるものです。
宇宙線は、最初はその発見自体が意味のある研究でしたし、その後宇宙線の中に素粒子物理の基本法則を見いだす研究がなされてきました。 そして現在、天体起源の宇宙線や天体・宇宙の性質を探るための研究がなされています。

いろいろな宇宙線検出器

黎明期には、霧箱、泡箱、写真乾板などがつかわれました。現在の宇宙線検出器は、 シンチレーター、光電子増倍管、計数管(比例、ストリームなど)などを組み合わせ、 電子回路やコンピュターとつないだオンラインシステム等、いろんな要素が組み合わされています。 いくつか興味深い実験や観測施設をリンクしてみます。 このほかにもたくさんあるのですが、とても紹介しきれません。リンクを辿ってホームページを 探検してみてください。

最高エネルギーの謎

宇宙には3Kの背景放射(背景輻射)が満ちているのですが、宇宙を通ってくる宇宙線はこれと反応します。 背景輻射は弱いのですが、長距離を行く間にはいつか反応してしまいます。これによって、ある程度以上エネルギーが高い宇宙線は、宇宙のなかをずっと進んで行くことはできなくなります。そのエネルギーはだいたい1020 eVくらいと予想されています。3名の提唱者の頭文字をとってGZK(Greisen-Zatsepin-Kuzmin)カットオフと呼ばれています。 ところがこれを超えるエネルギーのシャワーが近年数例観測され、議論をよんでいます。 GZKカットオフの予想は、相対論や光子の相互作用など、非常によく知られた事実をもとにしており、 簡単にはこれを破るシナリオがないからです。 GZKカットオフが実際にあるのかどうか、破れているのであればどのようになっているのか、それらを検証する実験(上記のTAを初めいくつか)が進行中です。

重力波

宇宙線以外にも、宇宙からは興味深い放射が届きます。その一つが、最近現実味を帯びてきた重力波の直接観測です。 重力波はアインシュタインが一般相対性理論で予言した「時空の歪みの波」です。 これを直接に検出し、大きさや周波数を測定することで、強重力場での相対論の検証、 ブラックホールなどの天体の物理、重力波をつかった天文学などが可能になります。

一般相対星理論と重力波

一般相対性理論によれば、私たちの世界=4次元(空間3+時間1)は質量やエネルギーに よって歪みます。

左は平坦な時空、右は質量によって歪んだ時空=重力の働いている時空。
質量が運動をしたとき、運動によって時々刻々とかわる重力場がかわります。 時空のかすかな歪みが、波の方程式を満たすことが知られており、こうして伝わる時空の歪みの ことを”重力波”とよんでいます。 もうすこし詳しい説明は
補助資料に示します。

重力波を放射する天体

重力波は非常に弱く、検出できそうなものはとても実験室では作れません。そこで天体、しかも 大質量でコンパクトなものがまず候補にあがります。
超新星爆発、中性子星やブラックホールの連星などです。
続きはこちら

もう少し詳しい説明(式あり)を読みたい方は 補助資料(pdf, 〜1.4MB) をどうぞ。

極限にいどむ検出実験

重力波はいままで人類が捉えた電波や宇宙線などの観測に比較して極端に弱く、測定するには 極限的な技術が必要です。 70年代から共鳴型アンテナの実験が始まり、現在も続いています。
一方で80年代からレーザー干渉計アンテナの開発が始まり、現在最高の感度のものでは、 時空の歪みがh〜10-22より細かく測定できるようになっています。 (1メートルのものさしが、1000億分の1のさらに1000億分の1のそのまた 10分の1メートル歪むくらいに相当します。)

大型レーザ干渉計型検出器の計画が、最初の重力波観測を争ってしのぎを削っています。 米国LIGO, 伊仏VIRGO, 独英GEO, 日本のTAMAなどです。

現在のLIGOの感度で、中性子星連星合体の重力波を、最大2000万光年くらい 遠くまで探すことができます。(TAMAは30万光年くらい)

筆者はTAMA実験のメンバーですが、そう遠くない将来に、重力波実験が実際の重力波を観測すると思っています。

レポート

今回は(ディスカッションのかわりに)レポートです。
課題、提出方法などについて、ここをご覧ください

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